さて『どんな風に経営を指導できるか』と、改めて考えてみると、なかなか《具体的な道筋》が見えて来る気がしないのが現実かも知れません。しかし、少し視点を緩くして《経営者にこそ必要な4大パワー》とは、いったいどんなものなのかと《想像》し始めると、意外にも、会計事務所の普通の業務が経営指導に役立つ道が見えて来るのです。

1.経営者が最も望むものは何なのか?

経営者に『自分が求めるパワーを一つだけ挙げるとすれば、それは何か?』と尋ねると、言葉の表現がどうであれ、『業績を獲得する力だ』と答えるのではないでしょうか。ところが更に『業績獲得力とは、どのようなものか?』と踏み込んで聞くと、これも表現自体がどうであれ『それは、しっかりと活動することだ』という類の、答にならないような答が戻されるケースが少なくないのです。
多くの経営者にとって業績獲得力のイメージは、《行動すること》すなわち《目に見える事業活動実践(フットワーク)》にしかないからなのかも知れません。だから《適切な答》が見つかりにくいのだと思います。ただ、何故、それは答にならない答なのでしょうか。

2.しっかりと業績を獲得するための力

その理由は、『ゴルフのスコアを上げるためには、しっかりスコアを上げることだ』と答えるのと似ているからです。そして、経営者自身が思考の堂々巡りをしていることに気付かないのかも知れません。
そのため、業績獲得力向上に向けた経営指導に、まず欠かせないのは、『しっかりと活動する』と言う時の《しっかりの内容》を、明確に気付かせることではないかと捉えられます。
では、《しっかりと業績を獲得する》ためには、どんな力が必要なのでしょうか。

3.鼻が利く上に活動目安を持てるなら

奇をてらわずシンプルに捉えるなら、業績獲得のために求められるパワーの第一は《①危険と好機の察知力》だと言えそうです。いわば《鼻が利く》ことです。業績獲得を推進しそうな好機のみならず、それを邪魔しそうな危険をも察知できなければ、経営は《後悔》の連続で終わってしまいかねないからです。
そして、その危険と好機に向かって《②フットワークの自己コントロール力》が不可欠になります。それが危険であれ好機であれ、状況に振り回され過ぎると、一時《良い成果》が得られた時でも、それを長続きさせられないからです。多くの企業が《業績の大当たり》の後《危険》を招く傾向があるのは、この《コントロール力=活動目安の掌握力》を持つ努力を怠るからかも知れません。

4.会計事務所の普通の業務が役に立つ

さて、先に進む前に、上記の《①危険と好機の察知力》《②活動目安の掌握力》という2つの《経営サポート》形態を、会計事務所業務の中に探してみましょう。
すると、《①危険と好機の察知力》強化は、年度決算に向けた《月次試算表》《資金収支管理》で果たせると思えて来ます。もちろん、事業状態を正確に反映する決算を行っていることが大前提ですが、月次の数値を真摯に捉えて行くと、危険や好機の《吐息》のようなものを感じられるようになるからです。

5.2通りの収支見通しが役に立つ背景

そして《②活動目安の掌握力》強化には、2通りの収支見通しを持つだけでも効果が出るはずです。その2つとは、たとえば《資金収支》を基準において、『売上ダウンやコストアップが、ここまで悪化すると危ない』という《最低ライン見通し》と、『ここまでやれば十分だろう』という《天井ライン見通し》です。
立派な《詳細予算》を作っていても、それが単なる《目標値》に留まると、出来たか出来なかったかの評価に終始してしまいやすいため、経営実践の役には立たないかも知れません。なぜなら、目標だけだと未達の時に焦り、達成が見えた時の新たな行動指針にもならないため、《余裕経営》という宝の獲得に繋がりにくいからです。

6.短期的な経営者目線が長期に向く時

その一方で『ここまでやれば十分だ』という目安を、予め持っていれば、その水準の達成可能性が見えたところで、今期よりも来期以降に向けた経営に目を向けることができます。経営姿勢が長期的になるのです。
そして、いったん経営が長期的な視点に向き始めると、今度は《③進捗管理力》を求めるようになります。たとえば、事業承継と相続対策という《長期視点》をせっかく持ったのに、承継法や対策の《妥当性》を毎年チェックするような姿勢がないと、事業承継プランも相続対策プランも『遠い過去の思い出話』になってしまうのと同じです。いったん長期に視点を置くなら、その後の状況変化に対応する《進捗管理》ができなければなりません。

7.経営者自身の考え方を表現できる力

4つ目のパワーとしては、言葉での表現が難しいのですが、《④経営表現力》というべきものが必要になります。経営者自身の考えや想定を《言葉や数値にする力》です。経営者自身が納得していない言葉や数値を並べて、予算や経営計画、事業承継プランや資金調達返済計画を作っても、それはただの形式です。
逆に、会計事務所から見たら《雑》にしか見えない予算や経営計画等でも、それが経営者自身の納得と社内の理解(活動努力の目安)に繋がるなら、それこそが求められる計画経営の姿ではないでしょうか。

8.業績獲得力の源泉が見えてき始めた

将来をコントロールすることはできなくても、《①危険と好機の察知力》《②活動目安の掌握力》《③進捗管理力》《④経営表現力》を持ち始めると、それが高度な水準に至っていないケースでさえ、経営者は以前よりも、日々生じる出来事に対して《落ち着いた判断や対応》ができるようになっているはずです。そして、それこそが《業績獲得力の源泉》だと言えるのです。

9.少し発想を変えて堀り下げてみると

そして、そうした経営指導やサポートが《月次試算表や資金収支表》《2通りの収支見通し》《計画と決算の整合性チェック(計画の修正も含む)》《予算や諸計画の作成》で可能になるなら、会計事務所業務がそのまま、業績獲得力強化に繋がり得ると言いやすくなります。
その結果、先生方の《提案》も、より一層迫力を増すとともに、経営者向けの《業績獲得力強化セミナー》を作るベースも、自然に出来上がるのです。
少し発想を変えて《掘り下げてみる》だけで、企業にも士業にもメリットの大きな道筋が見え始めるケースは、想像以上に多いかも知れません。

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