既に、電子帳簿保存義務化対応から、会計事務所ビジネスの《デジタル化》は始まっています。しかし、まだ『だから?』という程度の影響しか感じられないかも知れません。
しかし、扱いに優れた《無料ソフト》で企業業務の自動化や、その先のAIにも取り組めるようになった昨今、投資力のない中堅中小企業が、デジタル化に立ち遅れるとは言えなくなって来ました。
そしてこの流れが、会計事務所ビジネスの新たなチャンスを、短期にも長期にも生み出しそうなのです。
目次
1.中堅中小企業も《蚊帳の外》ではなくなった
どんな形であれ、デジタル化に向かうためのシステム強化は大きな投資となるため、規模が小さい企業は蚊帳の外に置かれると言われて来ました。投資力がある中堅中小企業でも、システム技術者が極端に不足する中では、後回しにされるのが常識だったかも知れません。
しかし、今や無料でダウンロードできる《2種類のソフト》の普及が、その状況を激変させる勢いなのです。
2.中小企業を蚊帳の中に戻す2種類の無料ソフト
その《2種類のソフト》の1つは、ZoomやChatworksのようなオンライン面談ソフトです。もちろん、少し高度なリモート会議や面談を行うには、若干の経費が発生しますが、参加だけを求める関与先や新規先に費用は発生しません。
そして、もう1つのソフトは、Python(パイソン)と呼ばれる《素人にも操作が可能なプログラミングソフト》です。そこには、様々なプラグイン(拡張ソフト)が無料で用意されており、Excelやメールの自動化から統計計算ソフトによる独自AI開発まで、大きな可能性が内在しています。
3.オフコンからパソコンへの移行期にも似た現象
『システムの専門家でもないのに自動化やAIへの取り組みができるのか』と言いたくもなりますが、それは30年前に、1度起きたことがある現象でもあるのです。
1980年代は、まだオフコンが主流で、企業には情報システム部という専門家集団がありました。その技術は到底、中堅中小企業に活用できるものではありませんでした。ところが、90年代にマッキントッシュやWindowsが普及し、中堅中小企業でも、当たり前にソフトが活用あるいは作成できるようになったわけです。当時は、パソコンオタクを嫌う《アナログ人》が多数派でしたが、今では、その《アナログ人》も、パソコンのみならず、スマホを駆使しているのではないでしょうか。
一見特殊で難しく見えても、変化に抗わず受け入れてみれば、案外『何でもない』ことなのかも知れないのです。
4.会計事務所事業を好転させる無料ソフトの効用
ただ、会計事務所ビジネスに、その普及型デジタル化あるいはAI化の流れは、どのように影響するのでしょうか。
たとえば、予実管理指導をイメージしてみましょう。従来なら、会計事務所が予算案を作り、そこに企業から修正要望が出されて一旦確定し、やや盛り上がらぬ《月次あるいは年度の予実再分析》を行っていたかも知れません。
しかしオンライン面談ソフトを使うなら、パソコン画面を共有しながら、リモートで予算の作り方の指導ができるようになるのです。その意味や価値は、会計事務所の姿勢次第で、非常の大きなものになり得ます。なぜなら《教育指導》を無料ソフトで有料化できるからです。しかも、訪問の必要もありません。
5.訪問せずにパソコンを遠隔で共有できるなら…
訪問しないで面談ができると、今度は、関与先から順番に、計画経営のみならず資産税対策等の有料指導も《したくなって来る》はずです。M&Aにかかわる情報提供ですら、関連サイトを《関与先と画面共有しながら読む》ことで、通信勉強会が可能になります。
もちろん、決算指導もリモートでできるようになるわけですが、昨今の無料リモート面談ソフトの活用は、むしろ《スポット契約獲得》の起点になると言えるのです。
6.まずはリモート通信を開く《大義》を作り出す
ただ、先にリモート通信を開かなければ、有料指導どころか提案も難しいかも知れません。そのため、まずは顧問先や関与先から《共感者》を探して、面談のリモート化に取り組む必要性が出て来るのです。
特に、職員先生の担当先には《所長先生の相談受付やセカンド・オピニオン的体制》という大義も作れるはずなのです。
しかも、《セカンド・オピニオン》ポジションで1つでも実績を作るなら、それを事例として、新規先に《セカンド・オピニオン》サービスを提供する可能性が生まれます。
企業サイドも、Zoom等の無料ソフトのダウンロードで、無料相談やスポット相談ができるとするなら、今日のような《経営が難しくなる》中では、歓迎ムードになり得るのではないでしょうか。
7.セカンド・オピニオンとの組み合わせは最強?
更に、それを急いで顧問契約奪取に向けず、予実管理や経営計画、資金管理や資産税対策、事業承継や事業終焉長期計画等のスポット契約に繋ぐなら、相手企業の現顧問契約関係に(それ程は)深く立ち入らず、有料提案ができそうなのです。
既存の事務所との間に波風が立ちそうなら、企業に『現顧問税理士にこんなお願いをするといいですよ』として、《セカンド・オピニオン》ポジションを維持できるでしょう。
ただ、そこで生まれる相手企業との信頼関係の大きさと、その先々の影響度を想像してみてください。これは、会計事務所ビジネスに大きな革新を起こす材料にもなり得るかも知れません。
8.今、会計事務所は新しい可能性の途上にある!
事業者数が減少を続ける一方で、税理士登録者数が増え続ける中では、従来型の顧問契約スタイルに固執しても、先行きは厳しいかも知れません。ところが、経営を何とか刷新したい企業のニーズを掘り起こせるなら、顧問契約以外のビジネスチャンスは広大だと言えそうなのです。
しかも、そのリモート指導体制の中で、先にご紹介したPython(パイソン)を使った業務の自動化やその先のAI化に取り組めるなら、会計事務所は中堅中小企業のデジタル化やAIの旗手にもなり得るかも知れません。
『そんなシステム力は事務所内にはない』としたら、Python(パイソン)で独立したフリーランスを交えた《3者通信》体制を作り、会計事務所は経営課題の指導だけに特化することも可能でしょう。
こんな風に捉えてみると、今、会計事務所ビジネスは《新しい可能性》の途上にあるとも言えるのです。
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