経営者と面談した時に必ずすべきこと

数値ではなく《人》を見る絶好期
ビジネス上の対人関係では、相手の《関心の方向性》を把握することが非常に重要です。特に、経営者の支援や指導に取り組む場合には、その方向性の把握が適切でなければ、効果的なアドバイスは難しいでしょう。
では《関心の方向性》は、どのような時にどう読み解き得るのでしょうか。

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

1.直接面談の機会が減少する中で…

リモート面談やメール交換が普通になって、直接面談の機会が減少するのが今日の傾向だと言えます。もちろん、それ自体が《問題》だという指摘ではなく、減少しつつある《直接面談機会》を、どのように生かすかを考えておくことが重要になって来ていると申し上げたいのです。
逆に、経営者の支援や指導の必要性よりも、ただ《決算業務を提供》していれば良いというケースでは、敢えて直接面談の機会を持つ必要は薄いかも知れません。

2.効果が生まれやすい面談の機会は

《面談》に際して、常に特定の効果を狙うべきだということではないと思います。ただし《年度決算》関連の経営者面談や、《月次試算表》に関わる事項での面談機会には、怠るべきではないことがあります。
もちろん数値や納税上の解説は非常に重要ですが、もっと重要だとさえ言えるのが《経営者の関心の方向性》の聞き取りなのです。なぜなら、その関心が先々、消極的には《クレームの素》になり、積極的には《新たな提案機会の糸口》になり得るからです。

3.経営者の関心等の方向を知る方法

では経営者の関心の方向性は、《どのように聞き出す》べきなのでしょうか。その方法は、単に《漠然としたインタビュー》を行うのではなく、業績に表れた数値に対する《意外性》、《不快感》、《疎遠感》を聞き取るあるいは感じ取ることにあります。
これは予想外だったという《意外性》、どうしてこうなってしまうのかという《不快感》、あまり話題にもならない《疎遠感》の中に、経営者の関心の方向性や《理解不足の傾向》が如実に表現されているからです。

4.言葉をそのままには受け取らずに

その際、表現された言葉通りに受け取っても、あまり効果はないかも知れませんし、時には危険かも知れません。たとえば『昨期(昨月)は売上が期待程伸びなかった』と経営者が言う時、『ああ、この社長は売上を伸ばしたいんだ』と感じるなら、それは、あまり意味があるとは言えないことの方が多いのです。売上を伸ばしたいのは、経営者なら誰もが持つ願望で、目前の経営者の個性的な発想や能力とは関係が薄いからです。

5.視点が向かう先は自分流的な世界

もし売上不足に視点が向かうなら、その経営者は《自分なりの売上予想》を持っていたのでしょう。その際に、数値で持っていたか、漠然と期待していたかは、あまり問題ではありません。大事なのは《何を根拠にもっと売れると思っていたか》、あるいは《何を期待していたか》が大事なのです。それは《雑談》の中に、しばしば表現されます。
《経営は本来どうあるべきか》という理屈から離れて、経営者の思いや感想を虚心に聞いていると、その経営者の《自社事業との関わり方》が見えて来る傾向があるのです。

6.経営者の熱量は皆同じではない?

一般的な経営理論には、その底に、経営者は誰もが必死に業績拡大に取り組んでいるかのような《仮定》が、無意識的に前提になっていることが少なくありません。経営理論に登場する経営者には《個性》や《個人的な価値観》が薄いことの方が多いのです。
その結果、経営理論では、しばしば《理論》を基準にして、『この経営者のレベルが高いか低いか』を問題にしてしまうのでしょう。そして、それが指導者にとって《最悪の指導スタイル》になりかねないのです。

7.最悪の指導スタイルから抜け出す

では、最悪の指導スタイルから抜け出すためには何が必要なのでしょうか。それは、その経営者の《関心の方向性》が、『何らかの知識や見識を加えることによって変化しないだろうか』と考えてみることであり、その考える材料を面談から仕入れる努力を怠らないことなのです。
売上のみに不満を持つ経営者は、資金繰りや利益は《案外》想定以上に確保できていることに気付いていないかも知れません。その結果、今後も《売上拡大》にばかり目が行き、資金収支と事業収支を悪化させるような《判断》を下す恐れさえあるのです。

8.少しの見識で判断の方向性が変化

そんな時、『もしかして、資金収支や利益が健全であることを伝えたら、その後の判断は変わったかも知れない』と考えてみるのが、指導者の役割だということです。
ぜんざいに塩を加えると、少ない砂糖で甘みが強くなることを《知らない》料理者が、甘過ぎるぜんざいを作ってしまうのは当然でしょう。その時『少し、塩を加えるんだよ』と伝えるだけで、味の結果は大きく変わり得るのです。

9.経営者を評価する前にすべきこと

経営判断に限らず、私達は《自分が知っている範囲内》でしか判断しない傾向があります。そして、その時の《知っている範囲での判断》とは、業績上で端的に言うなら、『数値が示す意味が分かるところだけで判断する』ということなのです。
そのため、その経営者が分かっていないこと、知らないことを見つけ出して、知識や智恵や技能を《補填》しようと試みること、それが何より効果的な経営上の支援になり得るということです。

10.知っていれば別様に出来るはず…

私達には『知っていれば、もっと別様にできたのに』と感じる活動が少なくありません。ところが、経営論や人のランク付けばかりに目を奪われると、知らないことを教える前に、経営者の見識や能力を評価してしまいやすいのです。
もちろん、それでも業務提供だけを目指すなら、問題があるとは言えません。しかし、経営者の支援や指導を試みるなら、特に面談時に《意外性》、《不快感》、《疎遠感》に耳を傾け、『それは何を知ったら違う印象になり得るのか』と考えてみると、それだけで、経営者との《感性の距離》が、一気に近くなると申し上げられるのです。

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