事業の《成功要因》には様々な見解がありますが、果たして『何が決め手になる』のでしょうか。そして、その《決め手》に、会計事務所は《どのように》関与できるのでしょうか。ご一緒に考えましょう。

1.現実感に乏しいドラマティックな成功要因

中堅中小企業の成功例として、たとえば金属の研磨技術を宇宙開発に役立てたような事例が、メディア等で紹介されることがあります。そこに登場する経営者は不屈の精神の持ち主である一方で、技術者は手の感触で金属を研磨してたりするわけです。
しかもそこには、救世主が現れるような人間関係があり、ドラマティックな形で《顧客》が出て来ます。しかし、成功した事業について、結果から逆にその成功要因を捉えたような事例は、むしろ奇跡にしか見えないのではないでしょうか。少なくとも、何をどう真似られるのかは想像もできません。

2.成功する企業に現実的に共通しているもの

経営者がメンタルを鍛えても、特別な技術者や営業者が存在しても、人脈を作っても顧客にアプローチしても、結局《それだけ》では成功には至りません。そうだとすれば、それらは《成功の付属物》であって《成功要因》ではないのでしょう。では《成功要因》は、いったい《どこ》にあるのでしょうか。
成功する企業には《厳然とした共通項》があります。それは、当たり前過ぎてドラマにはならないのでしょうが、《商品やサービスを完成させる》ということでしょう。有機リンゴ栽培で成功した農家は、食べておいしい有機リンゴができるまで諦めません。公的機関にシステムを売る中小企業は、たとえば《顔認証システム》を完成します。

3.《成功要因》を現実化する《2つの要素》

もちろん《完成品》を作ったら、それで成功が約束されるわけではありません。その後、運不運のような訳の分からないものに翻弄されることもあるからです。たとえば、星が美しく見える旅館を完成したのに、コロナ禍で観光客が激減するという事態も生じ得るのです。
そうだとすれば、成功要因には《2つの要素》がありそうなのです。その1つは《事を完成させる》という人為努力であり。2つ目は《状況条件が揃う》という天意のようなものです。人為努力は再現できますし、真似ることも可能です。しかし、天意のようなものは参考にすらならないのではないでしょうか。

4.逆に成功から《縁遠い》企業の特徴とは?

そのため《天意のようなもの》、つまり《成功の実現》そのものに目を奪われ過ぎると、そこに導いた《人為的な要因》が見えにくくなってしまうのだと思います。
成功が実現するかどうかは時の運ですが、成功を可能にする要因自体は人為努力で作れるとして、結果と原因を分けて捉えなければ、成功への道を歩み出すのは難しいということです。
逆に、成功から縁遠い企業は、いったん取り組んだことをやり遂げず、未完成のままの業務や商品、企画や案が山積しているはずなのです。

5.《完成》の意味を取り違えるべきではない

ただ、《完成する》とはどういうことなのでしょうか。それは端的に言うなら、《それ以上は手を加える必要がない》という状態に至ることです。たとえば『この金属は、もうこれ以上には研磨する必要がない』というところが完成であるわけです。ただし、それは《顧客の感覚》でなければなりませんし、逆に言うなら、顧客がそう感じるなら、それが完成だとも言えるのです。
そのため、ビジネスでは《販売を始められる=買い手が付く》ところが完成だと捉えるべきでしょう。

6.商品の完成度が低くても作れる《完成》形

たとえば、たとえ『こんなものに買い手が付かない』と、経営陣が感じるものでも、価格次第では商品になるかも知れません。見かけの悪いリンゴも、安価に売れば買い手が付くということです。そして、ここに会計事務所の支援が活きる《最大のフィールド》があると申し上げたいのです。
安価であれ高価であれ、《価格》を決めるには《コスト》把握が必要です。しかし、コストは《販売量》で大きく変化するため、コスト把握には《販売想定》が不可欠になります。そして《販売想定》は販促企画に左右されるため、《販促プラン》の作成とその予算化も重要になるのです。

7.会計事務所が企業経営に向けて語るべきこと

価格やコストを想定する方法は、シミュレーション計算と呼ばれますが、それは予算作成や経営計画作成と、呼び名が違うだけで実態は同じでしょう。しかも、想定するだけではなく、自社の《実績》から現実的な《計算前提条件》を作らなければ、その結果が砂上の楼閣になるという意味で、条件作りを支える《正確な決算》をしていないと機能しないという点でも、根が同じなのです。
つまり、きちんと決算をし、そこを基点にして、形はどうであれシミュレーション計算をして、価格と販売量目安がつくようにならなければ、実際に販売を開始して、自ら成功を勝ち取ることは、特別の幸運でもない限り不可能だということです。
会計事務所に対する経営者の意識を、もっともっと熱くするためには、この《当たり前》に見える思考の流れを、経営者に実感させる《語り掛け》が欠かせません。そして、経営者がこの《当たり前》が持つ意味に改めて気付く時、会計事務所は一層、企業にとってなくてはならない存在になっているはずなのです。

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