日常的に取り組める業務有料化

業務有料化に欠かせない発想とは?
最近、こんな質問を受けました。その内容は、『セカンド・オピニオン契約を獲得しても、有料で提案できる業務がなければ、結局《手間》ばかりが増えることになりそうだ』というものです。また計画経営の提案に際しても、『乗って来る経営者は皆無だった』そうですが、業務有料化には、どんな視点で取り組めばよいのでしょうか。

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

1.一般的な支援業務を例にすると…

会計事務所のビジネスとは大きく違う例ですが、たとえば大型家具を移動して模様替えをしたい近隣家庭で《移動の手伝い》をしても、感謝と小さな礼の品で終わるのが普通でしょう。もちろん、それ自体は善い行いでしょうが、その支援はビジネスにはなっていないということです。
逆に『模様替えのお手伝いをします』というWeb広告を出して、申し込みがあったとしても、手伝う先までの距離や支援内容次第では採算がとれず、やはりビジネスにはならないかも知れません。

2.ムダを有益に変える大事な発想法

しかし、そんな《ムダ》を感じた時にこそ《大事》になることがあります。その大事なこととは、一口に言うなら『その家具の移動支援で何を知ったと言えるか』という《知》の効用です。
その依頼主は、なぜ家具を動かしたかったのでしょうか。どこからどこへ動かし、その動かした後に何を置いた、あるいは置こうとしていたのでしょう。そして、それはどんな家具で、どんな思い入れがあるものだったのでしょうか。更には、依頼主の年齢や家族構成、家(あるいは事務所)の状況等、観察可能なことはたくさんあります。

3.先々の成果に繋がるビジネス体験

ただ、なぜ《そんなこと》を観察するのでしょう。それは端的に言うなら、家具移動は作業であり、その作業の中で《感じたこと》や《見聞したこと》や《考えたこと》や《自分ならこうするのに…》等の《支援者の頭と心の働き》こそが《先々の成果に繋がるビジネス源となる体験》だからです。
作業を大量に経験しても、作業上手になるだけでしょうが、その場で《感情》や《感覚》や《思考》や《意志(意欲)》を働かせてみようとするなら、そこに取り組み可能な《多様なニーズ》が見えて来るのです。

4.その場でさえも付加的提案が可能

会計事務所の仕事ではありませんが、以上のような家具移動の支援を例にすると、その場で『この家具、ここが傷んでいます』とか、『配線がたこ足で危険です』等と指摘して、修繕や配線工事の依頼がとれるかも知れません。
実際、経営指導つまりは顧問業務やコンサルティングが《うまく行かない》としたら、こうした《感情・感覚・思考・意志(意欲)》を総動員しないまま、決まりきった作業で支援を終えてしまうからだとも言えるのです。

5.ノウハウやソフトは必須ではない

有料業務と言うと、ノウハウやソフトを仕入れて、それを企業に提供するというニュアンスが強くなりがちです。もちろん、それはビジネスの典型ではありますが、たとえば資金収支管理には、予算作成ソフトの導入が必然ではないはずです。
たとえば、試算表チェックに際して、『前月は余剰資金が○○円減少しましたね。今月はどうなりそうですか』と、問うことから支援が始まるかも知れないからです。それは、現顧問先でもセカンド・オピニオン先でも同様です。

6.関与先や新規先を観察できる機会

その時、経営者や経理担当者を《観察》できるなら、何が分かっていないから資金管理が乱雑なのかが見えて来るでしょう。たとえば、今月や前月の現預金残高だけしか見ず、実際の資金余裕額を《正確に捉える技能》がないために、ついつい余計な支出をしてしまうことが、想像以上に早く資金ショートを起こす要因かも知れません。
そこで『少し乱暴な計算になりますが、前月の試算表から今月の資金余裕額を弾き出してみましょうか』と問い掛けてみます。

7.簡単にできることを提示してみる

そして『売上と商品構成(売掛比率)が前月と同額で、資金返済を含む《支出増》がなく、支払いも前月と同等なら、今月末時点での資金余裕額は〇〇と推測できます』と概算計算結果を提示するのです。ここまでは有料化は難しいかも知れません。
しかし『ちゃんと計算したい』という意欲を経営者が見せるなら、経営者にできること、たとえば《売掛や買掛の条件を含む売上や仕入れの予想》《通常の支出と特別の支出予定》等の提出を求め、それを元に《概算収支見通し》を有料提供することは可能になります。経営者が有料を嫌がるなら、支援提供をする必要はありません。『こうした方が良いですよ』という示唆で十分です。

8.経営者の感情・感覚・思考・意欲

これは、ご近所の《家具移動手伝い》支援と似ています。そして、実は《経営指導開始の本姿》でもあるのです。経営指導は、ノウハウがあって提案書があっても、それで始められるわけではありません。
経営者が、経営者のレベルで『そうしたい』『それなら自分にできる』『収支管理の方法が少し分かった』『もっと管理的計画的な経営に進みたい』という《感情》《感覚》《思考》《意欲》を抱いた時に経営指導が始まるということです。

9.関係開始時に必要なのは課題共有

有料の経営指導が始まった後でなら、経営のノウハウやソフトは役に立つこともあるでしょうが、それらは開始時に役立つものではありません。
経営者が関心を抱けるテーマで、たとえレベルが様々でも、《感情》《感覚》《思考》《意欲》を共有できる案件を探すことから始まるのです。そのため、取り組みの当初は無料になるかも知れないわけです。その無料が嫌なら、『ある会社では、こんな風に取り組みました』という事例を、相手の経営者の理解力に合わせて《内容を組み替え》ながら話し、その後で、その事例の実践を有料提案することから始めるという方法もあります。

10.風邪患者に入院を勧めていないか

高度で立派な経営ノウハウは、本当にたくさんあります。しかし『風邪程度の患者に入院を勧めていないか』という観点から、たとえば計画経営の手法やソフトを再検証してみるべきなのです。こんな言い方は不適切かも知れませんが、風邪のクライアントには《おかゆ》を提供するだけでも、有料業務になり得るかも知れません。
そして《おかゆ提供》も含めて、1つ1つの《経営支援》を文書や数表や資料でサンプル確認出来る程に完結させ、セカンド・オピニオン先を含む関与先に、『ほら、こんなことをするのです』と言える状況を作れば、業務の有料化は確実に進み始めると思います。

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