1.従来の《顧問契約》体系不安定化の要因

従来、会計事務所のビジネスは安定するのが普通でした。それは、そもそも企業にとって必須であり、しかも秘密度の高い決算の取り扱い先を、経営者が軽々に変える気分になれなかったからでしょう。
しかし、その後企業数の飽和に伴い《新規顧問契約》獲得の可能性が低下し始めます。そこに安値で決算を請け負う《記帳代行業者》が現れ、更に安価志向の会計事務所が、安価性をアピールして、他事務所の顧問契約を奪取する動きが盛んになりました。
こうした動きで、安定度が高かった会計事務所業界にも、一般のビジネスのような《競争原理》が入り込み、顧問契約の不安定性が急速に大きくなったと言えるでしょう。

2.力のある企業経営者の意識の変化

一方、力のある企業経営者は、当然のように業務のシステム化を進めます。その中には当然、決算のシステム化も含まれ、その結果、会計事務所は《決算業務の代行者》ではなく、《決算を含む経営管理の知恵袋》であって欲しいと願うようになります。
この意識変化に適合して行かなければ、確かに『AIがあれば会計事務所は不要』と言われても仕方がないかも知れません。
その結果、従来型の会計事務所は、力の弱い企業に手間のかかる代行業務を提供する方向に、追いやられてしまうのです。

3.会計事務所ビジネスの発展を妨げるもの

力のある企業と良好な関係を形成し、力の弱い企業にも効率的で効果的なサポートを試みようとする時、大きな障害になるものがあります。それは、これまでの会計事務所ビジネスの根底を支えた《顧問契約》のあり方です。
これまでの顧問契約では、決算とその指導をベースとした顧問契約を獲得し、収支見通しや資金繰り計画、あるいは簡潔な計画経営管理等を《付加価値》として、顧問料の範囲内に加えるケースが多かったと思います。
その形態が今、企業にとっても会計事務所にとっても、急速に足かせ化して来ているのです。

4. 従来方式の顧問契約が《足かせ化》?

なぜ従来型の顧問契約方式が、新たな展開の《足かせ》になってしまうのでしょう。
その理由の第1は、昨今のような先が見えないビジネス環境の中で、経営管理に注力しなければ生き残りさえ危うい企業にとって、《どのように会計事務所の力を借りれば良いか》が分かりにくいからです。たとえば、顧問契約の付加価値として計画経営指導を受けるのでしょうか。
企業が本格的に、計画経営や経営管理に取り組もうとする時、《付加価値対応》では始めから限界を感じるでしょう。

5.第2理由:デジタル化が更に進む中で…

第2の理由は、経営管理に自らシステム的に取り組む企業や、ソフト活用が得意なフリーランス的ビジネスに対して、付加価値を前提にした会計事務所の顧問契約は高額過ぎる懸念が出ます。
たとえば、決算に関わる助言が欲しいし、決算の最終チェックをして欲しいとする事業主体は、ほとんど記帳代行業者に奪われることになります。デジタル化が進む中で、新たに起業する主体に、従来型の顧問契約は《入り込む隙》が薄くなるのです。

6.第3理由:従来契約との整合性

 ただ、新たな展開を考えることは容易でも、現在の顧問契約との整合性の中で実現するのは、決して簡単なことではありません。そのため、会計事務所がビジネス変革に消極的にならざるを得ないケースも、実際少なくないのです。
しかし、その消極的な姿勢の多くが、顧問先等の意向を《気にする》に留まり、実際の提案行動に出ているわけではないとも言えそうなのです。
現状の顧問契約を維持した場合でも、コンサルティング発想からの問題指摘力を持ち、問題に気付いた経営者に新しく提案する手法を持ち、それを実現する道具を整備して行くなら、たとえ徐々にでも、将来性を拡大して行くことは可能なはずなのです。

7. 会計事務所の《新しいチャンス》

いつでも経営や決算に関わる《相談》を受けることを《顧問契約》と呼び、決算代行や計画経営や事業承継や投資の可能性判定等を《有料オプション》と位置付ける時、会計事務所のビジネスは、自然に未来型になって行くはずです。
しかも《相談》をして来ない先に、定期的に問題提起のための情報発信を行うとともに、経営者に数値管理や会計知識を《教える》メニューを(内容に応じて有料で)持つなら、顧問契約の内容に悩む必要もなくなります。
そして企業から《相談》を受けた時、それに《有料提案》で応える技法さえ獲得すれば、会計事務所の収入源は、むしろ豊かになるはずなのです。いくらAIが進んでも、人は《人に相談する》ものだからです。

8.中堅中小企業の生き残りチャンスでもある

経営に関して、いつでも相談できる先があり、一定の費用を支払えば、必要な専門的サポートが受けられるとしたら、それは今後の中堅中小企業にとっても、大きな生き残りのチャンスになり得ます。その詳しい背景は、別の機会にご一緒に捉えるとして、もはや今日、単に《頑張る》だけでは事業経営は不可能になって来ているからです。《頑張り》は必須でも、それを支える《考え方》や《実践技術》がなければ、中堅中小企業に将来性はないでしょう。
そんな社会情勢に目を向けるなら、少し考え方を柔軟にするだけで、会計事務所の収入源の維持と獲得の可能性は、非常に大きなことに気付くと申し上げたいのです。
具体的な内容は、本コーナーや教材・ツールで、ご一緒に捉えて行きたいと思います。

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