1.新規設立企業との契約は《費用対効果》が合わない?

新規設立企業に積極的にアプローチをし、たとえ契約を獲得しても、《費用対効果が合わない》と感じるのは当然かも知れません。新規設立企業に“高額の顧問料”の負担能力はなく、その上、経営者のマネジメントへの姿勢が不明瞭なケースもあって、手間が掛かることが多いからです。
しかも、開業間もなく廃業する企業も、必ずしも少ないとは言えません。もっと言うなら、新規設立企業が数年後に《事業を軌道に乗せた後》でも、顧問料や決算料の“値上げ”が難しいため、それ自体《不効率契約》として残ってしまうこともあるのです。

2.新設企業アプローチを再考するための《3つの視点》

確かに新規設立企業との契約には、既存の顧問事務所がないという“さわやかさ”と、いかにも経営者を指導しているという“充実感”を否定できませんが、それは上記【1】のようなデメリットを超えるものではない…、と果たして言えるでしょうか。
そこで、改めて新規設立企業へのアプローチを、《3つの視点》から考察し直してみる必要性が出ると言えるのです。その《第1の視点》は、まさに新規設立企業に提案する“顧問料”や“決算料”の水準です。

ただし、その前に《第2の視点》から考え始める必要があるかも知れません。なぜなら《第2の視点》は、会計事務所が行う基本業務の価値に関わるもので、まさに《第1の視点》と対価関係にあるものだからです。

3.会計事務所が今持つべき《アピール・ポイント》

時々、あるいはしばしば、『会計事務所が決算しか行わないなら、決算代行業と変わらない』等と揶揄されることがあります。それでも、確かに“節税”可能性が多かった頃には、決算代行業者には“適切な節税(税額の適正化)は不可能”と、簡単に反論できました。その言い回しに、今やかつての《アピール力》はありません。
しかし、申し上げるまでもなく、決算は業務ではなく《マネジメントの第一歩》あるいは《経営管理の基盤を形成》するものです。売上計上や原価計算が《適正》でなければ、経営戦略も経営革新も間違いだらけになるでしょう。製品別の原価や経費の想定計上を間違えば、どの商品で利益を出しているかの判定さえできません。

4.事業上のミスをそのまま原価計上しても良いのか?

そんな風に捉えなくとも、《決算から経営上の問題を読み取る》には、ただ伝票を処理してればよいと言うものではないでしょう。特に開業期には、たとえば、経営者は商品や材料の《仕入れ》で試行錯誤するのが普通です。売れない商品や使えない材料を仕入れてしまうことも、少なくありません。
そして、その《試行錯誤仕入れ》は、下手をすると、全て《原価》に計上されてしまうのです。これでは、価格設定どころか、その《商品》の経営的評価も間違います。逆に、開業前から持っており、現物出資した商品や材料を使う時、逆の問題が出てしまいます。もちろん、現物出資を《資本金に計上する》方法も、間違うと後から問題が出るはずです。

5.思い込みで経営してしまう経営者も少なくはない!

そのため、経営者が自社の商品を“思い込み”で捉えてしまわないよう、開業初期こそ《正確な決算》が求められるとは言えないでしょうか。また、経営者自身が事業に忙しく、決算にまで気が行かないとしても、《正確な決算なくしては確実な経営が難しくなる》という“思い”を持つ必要はないでしょうか。

気付かずに適切な決算をしないのと、正確さの必要性を意識しながら、当面は《意図的に手を抜く》のとでは、根本的な意味が違います。そして、それは会計事務所の支援業務にも言えることでしょう。

つまり《高い意識を持ちつつも、当面不可避な業務だけに絞る》発想を、新規設立企業経営者と共有するなら、会計事務所の費用対効果の問題も小さくなり得ると言うことです。もちろん、一般の企業でも、顧客開拓期には《費用を度外視》するものですから、初期の費用対効果よりも、《高い意識をベースにして先行き当然顧問料などを上げて行く路線ができる》ことの方が重要かも知れません。
いずれにせよ、当初《意図的》に業務を絞り込むわけですから、後々《絞り》を外す時、値上げが容易であることは、申し上げるまでもありません。

6.いつの間にか増えているアプローチの《見込み先》

そんな《決算こそが適正経営の基礎だ》という感覚を、新規設立企業経営者と共有できるなら、初期の《顧問料》や《決算料》の水準も、驚くほど安価にする必要はないでしょう。これが《第1の視点》、つまり会計事務所の価格設定のテーマです。

もちろん、単純に決算業務の価格を比較されて、契約に至らないというケースもあるでしょうが、そこも考えようなのです。

たとえ新規設立企業アプローチで契約成果が得られなくとも、たとえば月に50件でも新規設立企業に《ダイレクトメール》を送り、それが延べ計算で1年に達したとしますと、DM発送先累計は600件に達します。その後、数年が経過し、普通に成長した企業が、たとえ5割程度に留まっていたとしても、300社は《開業期に意識の高いDMを受け取った関係先》として残るのです。

7.会計事務所の強みとしての《決算》力

そんな先に、再び《マネジメントの起点としての決算》でアプローチすることは、比較的容易でしょう。事業が軌道に乗った途端に税務調査が入り、顧問事務所や記帳代行業者に“不満”を抱くようになった企業もあるかも知れません。

そうでなくとも開業数年先には、《マネジメント》の必要性を痛感しない経営者は、むしろ稀なのです。ただ《マネジメントの意味や方法》が分からないため、取り組みができないだけであるケースの方が多いのです。

事業の開業期を過ぎたところに、マネジメント意識の開帳期がやって来ます。そのタイミングで、『開業当初に“こんなご案内”をさせて頂いた〇〇ですが、その後、いかがですか?』という類のアプローチを試みるわけです。

8.開業期にこそ必要な《経営意識の高い》DM

もちろん、そのためには特に開業期に《経営意識の高いDM》を発信することが不可欠ですが、その費用自体は、それほど大きくはないはずです。リスト業者のデータ単価も、今では比較的安価になりました。
つまり、新規設立企業へのアプローチは、《始めから意識の高い企業を獲得する》ことと、《将来的なアプローチ先の蓄積》という2つの側面を狙うことになるわけです。
そして、ここに《第3の視点》が現れます。それは、『マネジメントに取り組めていない“ベテラン”企業へのアプローチへの応用』です。

9.意味のある予算が作れなければ経営の舵取りは難しい!

事業を軌道に乗せた既存企業でも、《個々の部門や従業員の行動目標として堪え得る予算》を導き出せる程“的確な決算”に取り組んでいるところは稀でしょう。時々、『資本と人材が豊富な大企業に、中小企業がかなうわけがない』などと言われますが、大企業でも《意味のある予算》を持っていなければ、事業崩壊は免れにくいはずです。

問題は資本や人材ではなく、《予算》つまり《経営の舵取り》なのです。新規設立企業アプローチで、会計事務所としての考え方やスタンスが“整理”されれば、既存の企業へのアプローチ力も、大幅にアップしているのではないでしょうか。

極論すれば、会計事務所が安価な顧問料や決算料で“過剰サービス”を強いられるのではなく、企業の経営陣や担当者に《経営管理業務》を負わせながら、適切な支援料で《決算+経営管理支援》という形の契約が、特別な意識を持たずに締結できるということです。

10.3つの視点が生む《将来展望》

既に《顧問先争奪戦》は、激しさを増し始めました。新規設立企業への積極的なアプローチで、当初から、あるいは一定期間経過後から、優良企業の卵を育てるとともに、優良企業にも《決算という地に足の着いた起点》から取り組む《マネジメント(計画経営)》の導入を提案できる時、会計事務所の競争力は、やや違ったステージを迎えるとも言えそうなのです。
そんな《先行き感覚》を持ちながら、新規設立企業に対し《第1の視点:企業と士業が双方に満足できる価格設定》《第2の視点:必要業務の絞り込み》《第3視点:会計事務所としての競争力への応用》を意識するなら、競争社会での一つの展望が生まれて来るのではないかと考えられるのです。

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