利益が大きいかどうかは別にして、健全な事業はより健全な方を向く一方で、縮み始めた事業はどんどん縮んで行くという傾向を否めません。なぜ、そんなことになるのでしょうか。その背後には、一見『何でもない』のに、経営のキーを握る要素があるようです。
目次
1.ひょんなことから感じ始めた自社の存在感
ある企業の社長が、決算期の翌月に渡された《決算見込み》を見ながら、ため息をついていました。ここ数年《赤字続き》だったからです。そして『私はいったい何をしているのか。損をするために苦労しているかのようだ』と、底知れぬ空しさを感じたと言います。
ところが、話がややオカルトめいてはいるのですが、決算の《数値》が、何やら《語り始めた》と言うのです。
2.決算書の中から《妙な姿》が見えて来た?
その声は、はっきりとは聞こえませんでしたが、今まで機械的に見ていた《売上》数値から、自社商品を買う顧客の姿が見えて来ました。それはまさに、取引先の担当者が自社に発注を掛けているシーンです。
すると、今度は《原価》の数値に、必死に販促に取り組む仕入れ先の姿が浮かびます。その他にも、金融機関の姿や様々なインフラで働く人たちが見えます。これらの事業主体は、一部ではあっても、社長の会社の《支払い》で成り立っているのです。
しかし、更に衝撃的なイメージに、社長は遭遇するのです。
3.たとえ赤字でも多くの従業員を養っている
それは《労務費》や《人件費》の欄に、従業員の《顔》が見えた時でした。会社は赤字でも、従業員の日常は会社の支払いで賄われています。社長自身も、自社からの報酬を得て生活をしています。
その時、社長は『自分の会社が、何と多くの人たちの《糧》になっているのだろう』と感じたそうです。それは『社会的な存在感を抱けたような気分だった』のだそうです。社会の大きな流れの中で、一つの役割を果たしている自社の《存在》が意識できたわけです。
4.オカルトではなく《現実》に突き進む社長
そんな思いの中で奇跡が起こるなら《ドラマティック》ですが、奇跡は時間を掛けながら現実の中で育ち始めていました。そのスタートは、『できるだけ長く、この存在感を保ちたい』というものでしたが、《目の付け所》が良かったようで、徐々に成果の芽を生み出すようになって行きます。
その間、社長は決算書のみならず、毎月の試算表に熱心に目を通すようになっていました。弱って来たとしか言えない自社の事業力を、少しでも支えるヒントが欲しかったからです。
5.大改革でなくとも地道な改善の効果は絶大
《できること》や《可能な改善》に、日常的に取り組み始めた社長の会社の業績は、まず下げ止まりを始めました。そして、その後、ゆっくりと上昇に転じたのです。
下げ止まりを始めたころから、社内のムードが変わったと言います。従業員の姿勢が変わり『これが士気というやつか』と、社長に勢いを感じさせ始めたのだそうです。
ゆっくりと上向き始めた時には、取引先の目も変わって来たと、社長は言われます。そして『何とか生きている存在から、他者に影響を与える存在になれた気がしている』とも言われるのです。
6.伸びる事業は更に伸び縮む事業は更に縮む
昔からしばしば、伸びる企業は更に伸び、縮む企業は更に縮んで行くと言われて来ました。ただ、その要因の解釈は様々だったと思います。しかし社長は『伸びる企業の経営者は、決算書を見るのが楽しみで、そうでない企業は見たくもないからだ』と言い切るのです。『子供の頃、悪い成績表には目も行かなかったのと同じだ』と言うわけです。
そして、良くても悪くても《自社の成績表》をじっと見ながら、何かを感じ取ろうと努力すると、《小さな改善》が見え始めると言うのです。
7.会計事務所にしかできない実践的経営指導
そして、その《小さな改善》を一つずつ無理をせずに実行し始めると、効果自体は小さくても、『自分の中のやる気のようなものが芽生え始める』そうなのです。そして、そんな改善が蓄積し始めると、その《やる気》は社内に浸透し始め、対外関係にも影響を及ぼし始めます。
決算の現実を離れた絵空事ではなく、決算の中に見つけ出す現実が大事だということでしょう。
企業の経営指導に際し、《決算》を原点に改善や更なる飛躍の原動力を創り出せるのは、会計事務所の仕事であり、会計事務所にしかできないことかも知れません。
決算を会計事務所業務の終点にせず、指導の起点にするためには、当然ながら《経営者への意識付け》が重要になります。そんな意識付けが必要になった時には、以下の実践ツール付き教材をご検討ください。
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