リーダーの《動詞的問いかけ》が組織を動かす

なぜ改善策を出そうとすると会議は止まるのか?
売上低迷や業績不振の会議で《具体的な改善策》を求められた瞬間、場が静まり返ってしまう…。多くの組織で起きるこの停滞の原因は、メンバーの能力不足というより、リーダーの《問い方》にあるとも言えます。それはどう意味でしょうか。そして、どうすればその停滞を打破し、組織を動かすことができるのでしょうか。

(執筆:森 克宣 株式会社エフ・ビー・サイブ研究所)

1.売上の回復策が話題になった役員会

ある会社の役員会で《売上回復策》が話題になったことがありました。社内の沈滞ムードを克服するには『目に見える成果が必要だ』という意見が出されたからです。

その後、その役員会では《売上回復策》を出そうとします。しかし、なかなか妙案が浮かびません。既に不振なのですから、それも当然なのでしょう。アイデアの行き詰まりの中で、当初の発言者に注目が集まりましたが、その当人は具体策を求められても『そこまでは~』としか答えられず、会議室は爆笑に包まれました。

2.それらしい理由付けで検討が終わる

その爆笑が重い雰囲気を破ったことで、社長に『俺たち何ができるんだろう。そして、何ができていなかったのだろう』と、平易に言わせたかのようでした。その時、考える対象が《改善策》から《できる》ことに移ったのです。

しばらく沈黙が続いた後、『そこまでは~』と言った製造役員が、『なぜ売上が落ちたかを、真剣に考えてはいなかったかも知れない』とつぶやくように言いました。確かに、地域の高齢化や社内担当者の活動意欲不足等という《それらしい》理由付けで、検討が終わる傾向がなかったとは言えないからです。

3.真剣に考えるとはどういうことか?

社長が『真剣に考えるってどういうことだよ』と問うと、今度は営業役員が『営業現場がどんな風に活動しているかを、改めて検証してみたい』と言い出しました。それは、営業役員なりの《真剣姿勢》なのでしょう。製造役員は、その発言を受けて『売れる商品と売れなくなった商品の特質を比較してみる』と付け加えます。

『それでどうするの?』と、社長が更に問うと、2人の役員は『新たに何が試せるかを考える材料を作る』と答えます。

4.名詞的な捉え方から動詞的な発想へ

その役員会では、どんな状況から何が始まったのでしょうか。それを一口で捉えるなら、《改善策》という名詞的検討あるいは目標(ゴール)視点から、《できることを探す》という動詞的あるいは《起点発想》に、目線が移動したのです。

その結果、《出来ていないことの理由を捉え直してみよう》《できることの選択肢を探してみよう》という《動詞的な行動志向》が、自然に生まれたわけです。

5.難題検討がどんどん前に進み始めた

社長は『いつまでにまとめるのか』と、短い言葉ながら身を乗り出して行きます。役員たちは『現場でのチェックもありますが、来週の月曜日までなら…』と答えます。その時、書記として参加していた経理担当者が、『では、検討結果を月曜日の夕刻までに、私にメールしてください。全内容を一覧表にして、皆さんに返送します』と言いました。

『で、どうするの?』と、また社長が聞きます。経理担当者は大胆にも、『その結果を元にして、来週中に臨時の役員会を開きませんか』と提案しました。

6.難題の検討を前に進めた原動力は?

『よし、そうしよう』と言って社長は日程を詰め、『今日はこれで解散』と一言発して会議室を出て行きました。残された役員たちの表情は、それでも明るかったのです。

よく捉え直してみると、社長は『できることは?』『考えるって?』『いつまでに探す?』『探した結果をどうする?』と、ずっと《動詞的》な表現で、その日の役員会をリードしていたと言えます。その《動詞的》リードで、メンバーの役割や業務内容が決まり、次の会合という予定まで明確になりました。

7.しかも前進に要した時間は短かった

定例役員会が開かれたのは水曜日で、次の臨時会合は翌週の金曜日でしたから、その間は、実質的に《6日の営業日》しかありません。しかし、それは《超短期ではあっても大きく前進する期待》を持たせ得る《計画的な行動》なのです。

逆に『来週の月曜日までに、売上改善策を提出せよ』という命令では、全てが止まってしまって、次々に段取りが進むかのような成果は出なかったでしょう。それはなぜなのでしょうか。

8.取組み方向が効率的に定まった理由

たとえば《健康増進》という名詞は、目標にはなります。既に申しました通り《目標》は遠い先にあるゴールで、真っ先に取り組むべき行動ではないのです。そのため、何をすべきかの具体策を問われても、『そこまでは~』と答えたくなります。目標はあっても、そこまで進む《道筋=計画》を考え出すのは困難なのです。

しかも《健康増進》には、高度な策が必要に見えて、最初から『実現できそうにない』という気分になりがちです。そもそも今健康でないから、なおさらでしょう。

しかし『健康回復のために何ができ、何を見落としているか』と動詞的に考えるなら、今すぐ調べ始めることがあると《気付きやすくなる》のです。そんなスタートが切れれば、次々にすべきことが明確化して行きます。《道筋=計画》が見え始めるのです。

9.動詞的な発想は動詞的な答に繋がる

そして同じ動詞的発想でも、『来年、どこまで売れるか』ではなく、『今月どこまで売れそうか』という問いには答えやすいでしょう。対象期間が短い分、《今の自分や部門のレベルで対処できること》に見えるからです。

社長が、停滞気味の会議を《動詞の連続》で先に進めたように、先が見えにくくなった今日に求められる計画マインドは、目標や理想像の絵を描くことよりも、《今できる》ことから、少しずつ道を伸ばして行くことなのかも知れません。

10.まとめ役が検討散漫化の防波堤に!

目標や理想の実現性は《状況の変化次第》のところがあります。その一方で、現状を把握しながら《できる》ことを選択肢的に探すなら、状況の変化に合わせた活動が、たとえ少しずつでも明確化しやすくなるのです。収集した情報が変われば、当然考え方も進歩します。

1つの結果に多々不足はあっても、『どうする』という動詞を忘れなければ、次々に《する》ことは見つかりそうです。そして、それがただ、堂々巡りに繋がる恐れを持っていたとしても、このケースの経理担当のような《まとめ役》が存在するなら、マイナスよりもプラスの効果の方が大きく《できる》という気もして来るのです。

《動詞で考える》、《考えたことをまとめる》という動詞が不足するなら、今、計画マインドが沈滞してしまうのは、当然なのかも知れません。

関連記事