伝えたいことを、相手が理解しやすい話にするのは、必ずしも容易ではありません。
特に“専門見識”に関しては、聞き手に“興味”を持たせること自体が非常に難しくなる場合の方が多いはずです。しかし“興味”持たせなければ、理解されないばかりでなく、その後の提案機会を、なかなかうまく作り出せません。
では、どうすべきなのでしょうか。実は、非常にシンプルな《技法》があるのです。

1.最初に考えるべきは提言したい《結論》だが…

たとえば、税制改正のセミナーを作ろうとするような時、どんな手順でストーリーを組み立てるでしょうか。多くの場合、新しい税制の項目を挙げ、それを順に解説して行くことになると思います。
もちろん、そうした《専門見識型》のセミナーも貴重ですが、経営者に《自事務所との何がしかの契約》を動機付けたい時には、たとえ税制改正の話でも、提案あるいは提言したいポイントから明確にし始めることが肝要なのです。結論から考えるわけです。
契約を前提にしない場合でも、聞き手に《行動の方向》を提言した方が、同じタイトルのセミナーでも、迫力が大きく変わって来ます。提案がある場合は、なおさらです。

2.デジタル化への減税を話題にしながら経営を語る

たとえば新たな税制として、デジタル(DX)化に向けた投資に関わる《減税》があったような場合、セミナーを組み立てる前に、『さて、私は話の締めに何を勧められるだろうか』と考えてみるわけです。
すると、『デジタル(DX)化って、そもそも何をどうすることか』という素朴な疑問や、『今までのシステム化はデジタル化ではないのか』等という思いが湧くかも知れません。そして多くの場合、それは《セミナーの聞き手》が持ち得る感覚なのです。
そのため、そのポイントに1つの答を出すと、話の重みが大きく変わり得るのです。

3.今までのシステム化の何がどう不足だったのか?

そこで、知人等から話を聞いてみると、『今までのシステム化は、業務の効率化の視点が大きかったかも知れない』等という見解が聞けたりします。経理業務などは、その典型かも知れません。
ところが、これからは《経営者の判断材料》になるようなデータの連携と集約が求められるという発想もあり得るようなのです。たとえば、自社のWebサイトの《どの部分》に《いつ頃》アクセスが多かったとか、店売りで商品が売れる時間帯を発見し、その時の店内監視カメラを見たら購買層が分かったとか、取引先からの発注タイミングは、こんな時に集中する等、様々な情報が、デジタル化されたデータを通じて、経営者の机上で分かるようになるということです。

4.他事務所との違いのみならず有料契約も提案可能

税制とは直接関係なさそうですが、他の事務所との《違い》はアピールできるでしょう。あるいは会計事務所が提供する予算や計画を、経営者が修正しながら活用できるようにすることで、計画経営は新しいステージを迎えるという結語にして、計画経営の指導力をアピールするとか、関係先のシステム会社やITベンダーの紹介を行うとか、とにかく何らかのアクションにつなぐことも可能になります。
すると、たとえば『中小企業がそうした結論に至らないのは、経営者がシステムに暗く、データで経営判断をするという習慣が乏しいからだ』などと気付き始めるのです。

5.迫力のある話で経営者に《次の行動》を示唆する

そんな《問題経営者》の事例を見つけ出すと、そこに《システム化へ進む際の障害》が見えてきます。そして、それを《現状の問題》としてまとめると、話の《冒頭の話題》が作りやすくなるのです。
それを小話にして、『今年の税制改正には、こんな意図があるようですね』という話に使えますし、更には計画経営の今後の在り方や、IT企業との協業セミナーの企画などへも進めることになります。

6.一見縁遠く見えるテーマでもストーリー化できる

もちろん、デジタル化に関するセミナーを行わなければならないと申し上げているのではありません。税制改正のように、経営指導とは一種縁遠そうに見える話題も、《何を提言できるか》を想定して、問題経営者の事例を集め、その中に潜むシステム障害を把握し、その問題点を整理して、最後に『今、企業経営にはこんな課題がありますね』という問題提起を整理するという手順に従うなら、提案やセミナーのストーリーになり得るということをご指摘したかったのです。

7.話をする順番とは逆に《内容》を組み立てる方法

そして話をする時は、上記6.で検討した内容を、逆順で話すと、スムーズな流れになり得ます。
つまり、セミナーであれ提案であれ、話す順番で考えてしまうから、なかなか完成に骨が折れるし、最後に具体的な提言や提案が難しくなるのであって、話す順序と逆順に、自ら感じる疑問に従って内容を整理して行くと、迫力のあるストーリーを作りやすいということなのです。
その方法は、既に“五芒星ストーリー形成法【(株)エフ・ビー・サイブ研究所の登録商法】”として確立されたもので、複数のサンプルを織り込んだ講座にもなっています。

連お勧め教材

セミナーの作り方とサンプル・ストーリー
《経営計画管理と事業承継のストーリー作成に挑戦》