セミナーパワーは、案外《誤解されている》かも知れません。なぜなら『優れたセミナーは、見識を十分に開示するものだ』とされるケースがあるからです。もちろん学校教育や資格取得研修のような場でなら、それ以上の正解はないでしょうが、実践的なビジネス現場では、少し違う感覚が必要になりそうなのです。

1.学校教育とは大きく違うビジネスプレゼン

ビジネス上でも、セミナーは学校の授業を連想させ、マンツーマンのプレゼンは家庭教師を思わせるかも知れません。そのためセミナー講師やプレゼンターは、自分の見識や知識を総動員し、誠意をもって《知っている限り》を伝えようとするでしょう。もちろん、その姿勢に問題があるとは言えません。
特に聞き手が税務見識の詳細を知りたい時、たとえば具体的な税額の適正化法(節税法)を知りたい時には、学校教育的なセミナーやプレゼンで、話し手にも聞き手にも、自然に熱が入るのが普通だと思います。年初に開催される《税制改正セミナー》は、その典型です。

2.知識提供型の内容では経営に踏み込めない

ところが一歩進んで、予実管理や経営計画の話、あるいは決算分析や事業承継の話には、つまりマネジメントの話になると、聞き手である経営者は、『この話し手には専門知識があるかも知れないが、実践的な経営問題には素人ではなかろうか』と感じながら聞き始めることが多いのです。
つまり聞き手は、『先生の見識がどうであれ、経営に役立つ話じゃないと聞かないよ』という《気分》になりがちだということです。
そのため、決算や計画に関わる詳細が並ぶレジメを見ると、聞き手は『ああ、今日の話は私が取り組むべきテーマではないな。それでも資料は多い。せっかくだから帰って経理担当者に読ませてみよう。資料が手に入っただけでもよかったのかな?』とさえ思いかねないわけです。

3.提供した資料への感謝は良好関係とは無縁

ただ《資料が入手できた》という思いは感謝ではありませんし、話し手との距離を縮める思いでもありません。詰まるところ、『自社に帰って担当者に読ませよう』ということですから、そこには《話し手と聞き手との良好な関係》が生じる余地は小さいのです。
しかも、最近では『これならネット検索で手に入る』と思われてしまうかも知れません。まさに『(資料を)ありがとう』という言葉は、『さようなら』を意味しているかも知れないのです。
では、経営者には《どんな話》をすべきなのでしょうか。

4.第1の要点:教えるより問題を考えさせる

セミナーやプレゼンの中で、経営者や専任担当者に認識あるいは再認識させるべきことは、大きく分けて3つあります。その1つ目は《問題の所在》です。
たとえば『予算や計画を作っても、その内容は実際の動向をかすりもしない』と揶揄する経営者がいたとします。もちろん、過去の実績平均を引き延ばしたような予算や計画なら、突発的な事象が起きなくても《大外れ》する年が出て来ます。業績動向には《波》があるのが普通だからです。ところが、それが『ああ、やっぱり事業を知らない先生に、予算や収支見通しを作ってもらっても意味がない』と感じさせるだけに終わる危険があるのです。
しかし、予算や計画作り上の《問題》は、そんなところにあるわけではないはずです。

5.真の《問題》はいったいどこにあるのか?

予算や計画が外れる時の《問題の所在》は、その企業に《的確な先行き計算ができるデータの蓄積》が乏しいか、その組織の《実行力の欠落》にあると言えるからです。あるいは、突発的な事象に際して失ったものを《リカバリーする企画力の欠如》にあるというケースも出るでしょう。
実は、予実管理や経営計画は、そうした事業や経営の弱点を見事に浮き彫りにしてくれるのです。《浮き彫りにしてくれる》とは、問題が《ある》とか《ない》とかだけではなく、《その問題の程度まで明確にしてくれる》ということです。そして『だからこそ、どう改善したらよいかが分かって来る』わけです。

6.第2の要点:自社現状に直面するショック

それ以前に、過去の平均や延長上でしか予算や計画自体が作れないとしたら、それこそ、その企業は『どう経営したらよいのかが分かっていない』のかも知れません。どうすれば良いのかが明確でないなら、《頑張っても頑張っても成果が出ない》のも、当然かも知れないのです。そして、ここで聞き手が受けるはずのショックが第2の要点になるわけです。
もちろん、表現はオブラートに包んで、『事業の改善あるいは強化策は、予算や計画を作って、それに沿った実行に取り組むことで明らかになるものであって、ある日突然思いつくものではない』という指摘になり得るでしょう。もちろん、そうした論理的な表現ではなく、『ある企業ではこうでした』という《事例で示す》ことの方が効果的かも知れません。

7.伝えるべきは回答よりも取り組みの方向性

その2つ目の《ショック》に関しては、セミナーやプレゼンの中では、回答自体ではなく《取り組みの方向性の提示》で十分だと思います。つまり、たとえばまず『自社の事業実態を数値で分析することから始めよう』として、経営姿勢の転換を示唆するわけです。
それは売上や利益という《結果》を見るのではなく、その《原因となった要素を探す》ことを意味します。自社は、設備や店舗のキャパシティーを十分に活かし切れているのでしょうか。そうでないとしたら、どの部分にネックがあるのでしょう。
あるいは《仕入値》や《支払金利額を含めた社内コストに比しての売値》は適切なのでしょうか。販売量はどれくらいなら、陣容はどれくらいなら、どこまでコストダウンができれば、自社事業は健全に生き延びられるのでしょうか。

8.計画経営の印象そのものを現実的にする!

そんな架空計算をしても無意味でしょうか。否、問題を数値に置き換えてみないから、意味のある検討ができず、有意義な対策が打てないのではないかと指摘すべきでしょう。
つまり、予実管理や経営計画への取り組みは、挫折で終わるのではなく挫折で始まるものだという理解に至らせることが、経営への意識を変える上で重要になるということなのです。
既に、お気付きのこととは思いますが、『こんな話はセミナーでなければ話せない』のではないでしょうか。あるいは、セミナーで話したからこそ、実際に計画経営が挫折した時に、『さあ、ここからが出発です。何が、どうまずかったのかの検討から始めましょう』と言えるようになるのではないでしょうか。

9.第3の要点:先生方の見識の価値への印象

意味のある事業改善策は、事業や社内や関係先をよく知る経営者でなければ作れないでしょう。しかし、どこにどんな問題があり、それがどのように収支や資産状況に影響しているかは、会計と数値に強い先生方の支援がなければ分析が難しくなります。
そのため、事例上での疑似体験であったとしても、《問題を考え》させて《現状に直面》するストーリーは必然的に《先生方の専門分野あるいは得意分野への敬意》を形成してくれるはずなのです。つまり、セミナーの最後に提示した方向性が《先生方の専門分野あるいは得意分野》であることが第3の要点になるということです。
こんな流れを作ると、セミナーやプレゼンの終わりで、先生方が『社長、支援は惜しみません。一緒に頑張りませんか』と、自然な形で言い出しやすいはずです。つまり提案環境ができるわけです。
そんな形のセミナーやプレゼンを行うような環境になれば、悩みの多い企業が増える中で、今後の会計事務所のビジネス・ポジションは、一層強固なものになって行くと捉えられるのです。

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