昨年実績を超えて行けば事業は当然に発展するという経済成長が崩れて、もう一世代以上が過ぎ去りました。しかし今も、当時のままの発想に留まる経営者は少なくありません。
一方、今の時代しか知らない人材は、予算や計画は“アプリ”で作るものだと思い込んでしまっているかも知れません。そんな中で、今もっと《面白く》経営する方法はないのでしょうか。

1.予算や計画が形骸化するのは手法のせいではない

予算や計画上の先行き数値が容易に形骸化してしまうのは、“将来のことは分からない”からではないでしょう。しかし、もし“先は分からない”と達観してしまうなら、目標設定の意味も薄くなります。目標は、申し上げるまでもなく“先行きの指標”だからです。
しかし逆に、なぜある時点の目標や見通しを、いつまでも持ち続けるのでしょう。そしてなぜ予算や経営計画はすぐに形骸化するとして、経営の道具の方を責めるのでしょうか。
結論を急ぐなら、その理由は、予算や計画と実績が“乖離”した時に、事業活動を軌道に戻す多ための“修正予算”や“修正計画”を、経営者が自ら作れないからではないでしょうか。

2.目標等の積み上げ型の予算や計画なら時代遅れか?

担当毎や部門毎に目標や見通しを《積み上げて行く》スタイルの予算や計画は、それ自体が大作業になるため、頻繁に行うことはできない…、でしょうか。それは多分、手計算時代の遺物的発想でしょう。
現代は、予算や経営計画を作成するソフトはなくとも、たとえばExcelででも、計算式を作り込んでおけば、損益ばかりではなく貸借対照表を組み上げることができます。資金収支計算作成も、計算式の作り込みで、その後は容易な作業になります。

3.会計事務所は計算のチェック者として重要性を増す

もちろん《計算自体が正しいかどうか》は、会計事務所のチェックが必要になるケースが多いでしょう。しかし、たとえば《4月~9月までの半期予算》で、4月と5月の実績が出たら予算の4月と5月を実績数値に変えてみることは、そんなに難しくないはずです。
すると、毎月のように《残りの月が予算通り》なら、9月末の半期の業績見込を《数値》として認識することができるのです。
その数値で満足でしょうか。満足なら、残りの月は予定通りに行動すればよいでしょうが、不満足なら、すぐにでも何とかしなければなりません。

4.毎月《半期の見通し》が自力計算できたとしたら…

さてその時、何が起きるでしょうか。
もし、『商品Aの販売実績は予算を下回っているが、商品Bは上回る。さて、商品Aのマイナスをプラスに変えようとすべきか、商品Bのプラスを更に伸ばすべきか』などと考え始めることができたら、判断業務は一気に《活き活き》あるいは《興味深く》なって来るかも知れません。
少なくとも『この予算、当たってないじゃないか』と不満をぶつける時よりも、気分ははるかに建設的です。
しかも、後半の改善幅を《半期で帳尻を合わせる》ことにおくなら、6月以降、あるいは7~9月の活動の指針や具体的な目標が、自然な形で創造されて行きます。

5.修正目標が具体化されるなら活動意欲は更に高まる

具体的な修正目標が、部門や担当別に出せたら、それぞれが対策を考えたくなるでしょうし、その対策が“可能なもの”に見えるなら、経営陣にも現場にも『よし、やってやろうじゃないか』という意気込みが生まれるでしょう。マネジメントばかりか、現場の活動も《活き活き》して来そうです。
前期が終わった後で、その業績が十分満足なら、後期の業績には必要以上にとらわれず、『来年度の業績確保のため、余裕があるうちに顧客開拓や当面の問題整理をしておこう』という機運も生まれるかも知れません。活動が《後手から先手》に回り始めるわけです。一方で、前期の業績に不満足なら、取り戻す手立てを後期で計画的に実施すべきです。

6.ダイナミックに活動するには計算力こそ必須になる

そんな風に、ダイナミックな活動ができるのは、企業が《自分たちで概算計算できる》からです。そして、活動が空虚に陥りやすいのは《具体的な計算ができないから》なのではないでしょうか。
昔の商人は、必ず“ソロバン”を学んだはずです。今、少なくとも表計算という現代ソロバンを駆使して、先行きを計算できないならビジネスマン(現代商人)とは言えないと言う風潮を、呼び起こすべきなのかも知れません。

7.必要なのは完璧な《AI》よりも個人の概算計算力

企業側に『計算を学ぶ時間的な余裕はない』としたら、まずは時間作りのための計画から取り組むべきでしょう。武器も持たずに急いで戦に出ても瞬殺されるだけです。
そうした観点に立ち、会計事務所が企業に(難しい会計論ではなく)上二桁さえ間違わなければ良しとする程度の概算計算方法から、たとえばExcelで教えるなら、それ自体が1つの《教育ビジネス》になりそうです。
教育内容は映像化できます。そしてそれがうまく行けば、会計事務所は業績数値の管理監督に徹し、提供業務量を減らしながら関与先を増やせるかも知れません。今のままでは、自分では計算できない企業の経営陣の仕事は、どこかの大手が開発するAIに取られてしまいかねません。それは企業にも会計事務所にも、決して面白い結果ではないはずなのです。

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