たとえ《提案》と名付けても、企業経営者に頭を下げてお願いするなら、士業先生に提案は似合わないと言うべきでしょう。経営の指導者が頭を下げてしまっては、その後の指導は難しくなるからです。しかし、逆に横柄に構えても、確かに成果は期待できません。さてどうするか、それが今回の課題です。

1.営業活動に対する重大過ぎる程の《誤解》とは?

今も根強い人気を保つ時代劇、時に《江戸時代の物語》では、商人は《手もみ》しながら『お願いしますよ』と言うのが一般的でしょう。もちろん、宴を設けたり買収を試みたりするもの日常茶飯事です。
そして、いつの間にか、私たちは、そうした《お願い姿勢》が営業の本姿だと、誤解させられてしまっているかも知れないのです。極端に言うと、一種の洗脳でしょうか。

2.近世の歴史は商人パワーの怖さを熟知していた!

しかし既に戦国時代には、日本の武将は《商人の怖さ》を知っていたと言えます。特にスペインの商人が、まず宣教師を送り込み、その後に軍隊で制圧し、最後に真打として、商人が植民地を牛耳る姿を、少なくとも見聞していたはずだからです。当時、マニラ(フィリピン)からのバテレン情報の入手は、盛んだったと言われます。
戦国時代よりも後になりますが、オランダやイギリスの《東インド会社》は、商業をベースにした会社が、軍隊を擁していました。軍人が商業を支配していたのではないのです。
そんな《商》の力を、むしろ《恐れた》のが江戸時代の特徴だったのかも知れません。

3.江戸時代後期に頭を下げていたのは武士か商人か

さて、江戸時代でも、商業パワーの源である貨幣経済が進むと、農村も武士も困窮して行きます。そのため、実質的には、侍は商人に頭を下げて、金銭支援を《お願い》していたはずなのです。それでも武士が優位にあったとするなら、商人を斬り捨てても罪の問われない《斬り捨て御免》の制度があったからでしょう。
殺されてはたまりませんから、商人は低姿勢に出ます。しかし、実質は《金を握る商人》の方が、武士より強い立場だったはずなのです。
明治以降、資本主義が導入されて、その傾向は更に強くなります。

4.商人の基本活動である営業が卑屈ではあり得ない

なぜ、こんな話をするかと申しますと、《営業=商人の基本活動=卑屈》という歴史認識に大きな疑問を抱くからです。いつの世でも、腰が低い方が強者で、威張るのは弱者でしょう。勘違いしてはいけないのです。
そして《商人=営業者》は、お願い営業をするのが普通だと考えるのも、見当違いかも知れません。自然な形の営業とは、『価値が分かる人に価値ある商品を売る』ことで成り立つからです。商品の価値が分からない人を、本来の商人は相手にもしないのです。ただ、敵に回すのは面倒だから、表向き丁寧に接しているに過ぎません。それは、洋の東西を問わない事象でしょう。

5.本来的な《商人》の姿を参考にすべき士業の営業

そして『価値が分かる人に価値あるサービスを提供する』という本来的な《商人=ビジネスマン》の姿こそが高度専門ビジネスの営業姿勢であるべきだと申し上げたいわけです。価値が分からない顧客に、お願いする必要など、さらさらないのです。
ただし、ここに困る部分が出て来ます。決算業務は別として、計画経営や資産税対策、M&Aへの取り組みや困窮する前の会社清算の効果等は、普通に話したのでは、なかなか理解者が得られないのが現実だからです。
そのため経営を指導する立場をとる高度専門業では、まず《理解者を創造する》ところから始めなければならないわけです。つまりは《市場創造》です。

6.専門業が取り組まざるを得ない顧客教育ステップ

そこでまずは、たとえばセミナーや役員会研修、重要課題のプレゼンテーションや勉強会を主催あるいは実施するところから始める必要が出てきます。経営者や資産家に《重要課題》を認識させることが先決になるということです。
しかも、専門業の優位性は、そうしたセミナーや勉強会への参加から《有料》にできるというところにあるはずなのです。学びにも対価が必要だからです。

7.時代のパワー基盤をベースとする展開が営業の姿

そのため、専門見識をベースに事業展開を行うに際しては、顧客に《①学びの動機付け》を行い、《②有料の学びの場を提供》しながら、《③必要性を理解・認識する顧客》を探し出して、《④適正な価格でサービスを提供する》というスタイルになるのが自然でしょう。
営業は、昔は《兵士》を引き連れて行うものでした。それが通貨の普及で《金銭的な優位性》に立脚するようになります。そして今日《見識を適正に提供する》ことが、営業のベースになりつつあるのです。
それは、《武力⇒金銭力⇒見識力》と、各時代のパワー基盤を前提に、営業が成り立つからでしょう。そんなことを知らずに、『営業はお願い活動だ』と主張する人がいても、あまり問題にはしないことが重要なのかも知れません。

実践提案

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